増える糖尿病患者は豊かさの代償か?

 糖尿病は、中高年の間で増えている慢性病で、怖い合併症をもっています。厚生労働省は1997年、「糖尿病実態調査」の結果を発表し、「糖尿病が強く疑われる」人は約690万人、「糖尿病の可能性を否定できない」という人を含めると約1370万人となり、40歳以上の日本人のW人に1人以上が、糖尿病にかかっていると推定しています。

 

 食生活も豊かになり、食べたい物がいつでも手軽に手に入るようになり、一方では、インフラも整備されて歩くことも減ってきました。特に中高年では、若い頃と違ってエネルギーを消費する量が少なくなりました。にもかかわらず、若い頃と同じように食べる人が多いのです。

 

 食べ物が豊かになった代わりに肥満の人も多くなり、糖尿病になる人や糖尿病予備軍が増えてしまったのです。

 

自己規制には強い意志

 糖尿病が油断できない点は、糖尿病の初期には症状がわかりにくく、気付かないうちに徐々にいろいろな合併症が出てくることです。しかし、病気をよく理解して養生していれば健康な人たちと変わることのない生活を送ることもできるのです。とはいっても初期の頃は、痛くもかゆくもなく、日々の活動でも何ら支障がないため、食事を制限したり散歩を心がけるなどの自己規制を続けるには、かなりの強い意志が必要です。

 

糖尿病と診断されて養生をしていた人が、自己判断で途中で治療を中断する人が多いのも、症状がほとんどないからでしょう。基本的な治療は、食事や運動療法ですが、毎日の生活のなかには、療養が乱されやすい誘惑が溢れているのが現実です。

 

養生とは「命を養うこと」「健康であるように注意すること」「病気の手当てをし、保養すること」という意味をもっています。生理的、物理的、精神的なス卜レスなどを予防する体内の力を高めて病気を防ぎ、防衛力をつけることをいいます。自然治癒力を高めるための健康法と考えてちょいでしょう。

 

QOL(クオリティーオブライフ)

 人それぞれ仕事の種類も違うし、人生観も違います。適度な運動をしなければと、頭ではわかっていながらも、多忙な人が節制を実行するのは容易ではありません。好きな酒や菓子を我慢してまで生きるのはつまらない、食べたいだけ食べ、それで死ぬのなら本望だ、という人生観を強固に貫いている人も稀ではないのです。

 

 それぞれが、かけがえのない人生であり、医療者が強制することはできませんが、人は誰しも自分の「人生の質=クオリティ・オブ・ライフ(QOL)」を高めていきたいと思っているのではないでしょうか。その人の人間性が失われない、生きがいのあるQOLを、誰もが望んでいるではないでしょうか。それには、病気や療養について、正しい知識を認識することが大切なのです。

 

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